この記事の内容
ババ抜きの勝敗を左右する要素は、大きく2つに分けられます。
心理戦のテクニックはババ抜きのルールと勝率を上げる引き方・引かせ方で解説しました。この記事で調べるのはもう一方、「全員の腕が完全に同じだったときに残る差」のほうです。
そのため、シミュレーションでは「引く位置は毎回完全にランダム」と仮定しました。誰も演技をせず、誰も読まない。こうすると心理戦の影響がゼロになり、席順と配られ方だけで決まる差が浮かび上がります。
シミュレーションのルール設定
この手の集計はプログラムのバグひとつで結果が変わるので、3段階で検証しています。
各人数20万局ずつ、合計100万局の結果です。席1が最初に引く人、以降は席2、席3……の順に手番が回ります。
| 人数 | 席1 | 席2 | 席3 | 席4 | 席5 | 席6 | 均等なら |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2人 | 50.79% | 49.21% | – | – | – | – | 50.00% |
| 3人 | 36.19% | 42.06% | 21.75% | – | – | – | 33.33% |
| 4人 | 26.04% | 24.24% | 24.54% | 25.18% | – | – | 25.00% |
| 5人 | 24.19% | 7.31% | 17.97% | 25.40% | 25.13% | – | 20.00% |
| 6人 | 24.04% | 7.66% | 16.45% | 12.81% | 15.97% | 23.07% | 16.67% |
結果を見て最初に驚くのは、人数によって傾向がまったく違うことです。
4人だけは全席が24.24%〜26.04%に収まり、最大差はわずか1.80ポイントです。運だけで決まるゲームとしては理想的なバランスといえます。席順を気にせず遊べる唯一の人数です。
5人プレイでは席2の敗率が7.31%。最も不利な席4(25.40%)と比べると3.5倍の差があります。6人プレイでも席2は7.66%で、席1(24.04%)の3分の1以下です。
理由は席2が「最初に引かれる人」だからです。席1が最初の手番で席2から1枚引くため、席2は誰よりも早く手札が1枚減ります。手札が減れば上がるのも早く、ジョーカーを持って取り残されるリスクが下がる——この最初の1枚のアドバンテージが、最後まで効き続けます。
ところが3人では、その席2が最も不利(42.06%)になります。有利なのは最後の席3(21.75%)です。人数が少ないと1周が早く、「最初に1枚減らせる」という利点より「配られる枚数の差」や周回の巡り合わせのほうが強く効くためだと考えられます。
注意
「席2が有利」は5人・6人での話で、すべての人数に当てはまる法則ではありません。3人では正反対になります。人数ごとに表を見てください。
全員が引いた回数の合計です。2人ならたった8回で終わりますが、6人だと平均73回。人数が増えるとゲーム時間は急激に伸びます。
「配られた時点でジョーカーが手札にあると嫌な予感がする」——これが本当かどうかも調べました。
| 人数 | 最初にジョーカーを持っていた人の敗率 | 無関係なら | 差 |
|---|---|---|---|
| 2人 | 56.72% | 50.00% | +6.72pt |
| 3人 | 37.30% | 33.33% | +3.97pt |
| 4人 | 26.67% | 25.00% | +1.67pt |
| 5人 | 20.55% | 20.00% | +0.55pt |
| 6人 | 17.30% | 16.67% | +0.63pt |
嫌な予感は正しいのですが、その大きさは人数によって全然違います。2人プレイでは6.72ポイントも不利になる一方、5人・6人では0.6ポイント程度、ほぼ誤差の範囲です。
ここから言えること
大人数のババ抜きで、最初にジョーカーを引いても落ち込む必要はありません。5人以上なら初期配布の影響はほぼ消えます。逆に2人ババ抜きでジョーカーを持たされたら、それは本当に不利なので、心理戦で取り返しにいく必要があります。
ここまでの数字は「毎回、席1から配り始めて、席1から手番が始まる」という固定条件のものです。では何をずらせば公平になるのか。4つの条件で比較実験をしました(5人・6人で各12万局)。
| 条件 | 5人:席差(最大−最小) | 6人:席差(最大−最小) |
|---|---|---|
| A 何もずらさない | 17.87pt | 16.63pt |
| B 親(最初の手番)だけずらす | 9.45pt | 7.64pt |
| C 配り始めだけずらす | 2.86pt | 9.38pt |
| D 配り始めと親を一緒にずらす | 0.23pt | 0.28pt |
答えははっきりしています。片方だけずらしても不公平は残り、両方を一緒にずらせば消えます。条件Dの0.23〜0.28ポイントという差はシミュレーションの誤差の範囲で、実質的に完全な公平です。
理由はシンプルで、53枚は2〜6のどの人数でも割り切れないため、誰かが必ず他より多く配られるからです。親だけをずらしても「多く配られる席」は固定されたままなので、不公平が残ります。
連戦するときのルール(これだけ守れば公平)
毎回、配り始める人と最初に引く人を同じ人にして、1ゲームごとに1つずつ隣にずらす。——これで席順による有利不利はほぼ完全に消えます。逆に「配る人はいつも同じ、親だけ交代」という運用だと、不公平が残り続けます。
4人プレイは席差1.80ポイントとほぼ完全に公平で、しかも平均35.6回で決着します。公平さとテンポの両立という意味では4人がベストです。
敗率7%台は、均等値(20%・16.67%)の半分以下です。ただし1ゲーム目だけの話で、連戦で席をずらすなら意味はなくなります。
最後に強調しておきたいのは、これらが全員が完全にランダムに引いた場合の数字だということです。実際のババ抜きでは、ジョーカーの位置を悟らせない技術や、相手の反応を読む力のほうがはるかに大きく効きます。席順の差は、腕が互角のときに残る土台部分だと考えてください。心理戦のほうはババ抜きのルールと勝率を上げる引き方・引かせ方で扱っています。
今回の検証中に見つけた性質です。ババ抜きの局面は循環しえます。
たとえば2人が「ジョーカー」と「あるカード1枚」だけを持ち合った状態で、お互いに相手の欲しくないほうのカードを引き続けると、盤面は元に戻ってしまいます。これが繰り返されると、理論上ゲームは終わりません。
実際には毎回ペアが成立する可能性があるので、終わらない確率は0(=いつかは必ず終わる)なのですが、「何手以内に必ず終わる」という上限は存在しません。厳密計算のプログラムを書いたとき、この循環のせいで計算が止まらなくなり、確率が減衰していく性質を使った別の方法に書き換える必要がありました。
ちなみに大富豪や7並べにはこの性質がありません。カードは場に出ていく一方なので、必ず有限手数で終わります。手札を「取ったり取られたり」するババ抜き特有の性質です。
2人だと「最初に引かれる」という利点と「最初に引ける」という利点がほぼ釣り合うためです。ただし2人プレイは初期配布の影響がいちばん大きい形式で、最初にジョーカーを持たされた人の敗率は56.72%まで上がります。席順ではなく配られ方で決まる、と言い換えられます。
敗率20%前後の数字なら、20万回の試行での標準誤差はおよそ0.09ポイントです。この記事で「差がある」と書いている項目はいずれも数ポイント以上離れているので、誤差では説明できません。逆に条件Dの0.23ポイントのような差は、誤差の範囲として扱っています。
変わります。この記事の数字はジョーカー1枚の標準ルールのものです。にせジョーカー(当たりに見えて外れのカード)を入れると読み合いの要素が増えるぶん、構造的な席差の比重は相対的に下がります。ボドゲ広場のババ抜きではにせジョーカーのオン・オフを選べます。
席の並びが鏡写しになるだけで、有利不利の構造そのものは変わりません。「最初に引かれる席が有利(5人・6人の場合)」という関係は、方向を逆にしても成立します。
同じ手番構造なら同じ差が出ます。ただしボドゲ広場のババ抜きは最大4人(CPU戦も含む)で、今回の結果では4人がいちばん公平な人数——席差1.80ポイントでほぼ互角でした。この形式で席順を気にする必要はほとんどありません。席差が大きく開くのは5人・6人で遊ぶ場合、つまり手持ちのトランプで遊ぶときの話です。
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